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根暗乙女ゲーマーの無意味自堕落私生活。
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いきなりですが終幕第一話。
今回は壮と巴のワンシーンです。
サイドのオルゴール流しながら読むとちょっと雰囲気出るかもです(笑)
推敲さっぱりしてないんで、文章メタメタなんですが・・・気力が尽きた^q^




闇夜に白く浮かび上がる巨大な城。
いくつもの尖塔が居並び、不気味に佇んでいる。

ひた、ひた、ひた。ずるずるずる。

その城の廊下を、水辺を歩くような足音と何かを引きずる音を響かせて一人、少女が行く。
影が長く足元からのび、化け物のように広がっている。

「また、殺してきたんですか…?」

ふと、奥の部屋へと続く扉が僅か開き、声が漏れる。
声の主は影となっていて顔は知れない。

「…うん」

少女はその声を聞くと笑顔になって頷いた。

「また、ヤっちゃった」

そのあっけらかんとした様子とは裏腹に、手には死神が持つような鎌を手にしていた。
暗闇で判別できないが、響く水音から、扉の傍に立つ声の主はそれが血に塗れていることに気付いている。

「よく毎度毎度飽きもせず…」

飽きれたように呟かれた言葉に、少女はやはりにっこり笑う。

「うん、だって大好きなんだもん」

扉が更に開き、部屋の明かりが差し込む。
明るみに映し出された彼女の姿は、鮮やかなほど真っ赤に染め上がっていた。

「…始末が大変ですけど…いっそ綺麗なものですね」

扉を開いた男は、うっすらと目を細めてそう言うと、血まみれの少女を部屋に招き入れた。













「…今度はどこの誰が相手だったんですか?」

こぽこぽこぽ、と。
ポットからカップへ、紅茶が注がれていく。
執事でもなんでもない男が器用にティーセットを操る。
名前を壮といった。
彼の指先は長く器用だ。色々なことをやってのける。
身長は高い方かもしれない。どちらかというと細身のすらりとしたシルエットの印象を持つが、その実、鍛えた体は適度に筋肉がついている。
深い闇夜を思わせる漆黒の髪は短く切りそろえられており、紅緋の瞳は硝子玉のようによく暗闇で光る。
見た目だけなら死神のような男だ。
そんな風に少女・巴は思って、彼が紅茶を淹れてくれるのを待つ。

「雄飛。公爵家のご令嬢」

短く答えると、彼の眉根が少しだけつり上がった。
あ、怒ってる。
他人事のように思って笑う。

「それはまた…面倒な人を殺しましたね。…さあ、紅茶をどうぞ」

怒っているのだろうに彼は静かだ。けして声を荒げたりはしない。
丁寧にカップを渡してくれた。

「うん、そうだね。メンドーだね」

少女はカップを両手で受け取ると、あっさり頷いて肯定する。

死神のような容姿で静かに紅茶を淹れる男。
全身を血に染め上げたままそれを嬉しそうに見ている少女。

こんな深夜にティータイムが始まるのは、決まってこんな状況の時だった。

「で…聞く必要もない気がしますが、なんで殺したんですか」

壮は自分にも紅茶を淹れながら問う。

「さっき言ったじゃん。大好きだからって」

先ほどと同じ台詞を繰り返し、少女は唇を尖らせる。

「その答え方はやめなさいと注意しませんでしたか。誤解するでしょう」

咎めるように壮が言う。

「人殺しが好き、って誤解されるっていうんでしょ。でも実際殺してるんだから大差ないんじゃないかな」

「そういう問題じゃありません。言葉を正しく使えるかどうかの問題です」

「どっちにしたってどうでもいいよ。殺しちゃったもんは殺しちゃったもん」

一寸も悪びれた様子もなく巴は笑う。
壮は溜息を吐いた。
困ったお姫様だ、とでも言いたそうに。

「あなたは誰も彼も適当にヤっちゃってる訳じゃないでしょう」

「うん、そうだね」

紅茶を一口飲む。
甘いような苦いような味が口に広がっていく。
苦いと感じるのはもしかしたら口の端でも切れたからかもしれないが。

「雄飛嬢、殺したくなるくらいだったんですか?」

「さっきから壮は質問責めだなあ。うん、まあそうだけど」

巴はカップをテーブルに置くと、上着を一枚脱いだ。
いつも好んできている黒と赤の組み合わせの簡素なドレスがどうにも重たいと思った。
血を含んでいるからかな、と頭の隅で考える。

「殺したくなるくらい――――――大好きになっちゃった、えへ」

「えへ、じゃありません。気持ち悪い。それで、死体はどこにやったんです」

「壮は冷静だなあ、面白くないよ。もうちょっとこう、なんか反応が欲しいな。真夜中に扉を開けたら血まみれの女の子が立ってるなんてホラーだよ?」

巴はまた唇を尖らせる。
しかし壮の方が面白くないという顔をしていた。

「毎回毎回同じ姿で来られたら、さすがの私でも慣れます」

「さすがの私って…初回から驚いたりなんてしなかったくせに」

巴がこうやってここへ現れるティータイムは既にもう数え切れないほどあって、そのどれにおいても壮が仰天したりするようなことはなかった。
ただ淡々とまたか、という顔をして自分を出迎えるだけだ。

「私のことなんてどうでもいいですから。死体どこやったんです」

「気が付いたら細切れになってたから、捨てちゃった」

「…あとで場所教えてくださいね。部下に拾わせますから」

「うん。隠蔽よろしく」

それから壮は巴の持ってきた鎌に視線をくれる。
鎌は巴が揮うには些か大きい。そのために重いのか、今は無造作に床に放置してある。
壮の部屋の床まで血塗れだ。

「…掃除が面倒なことになりそうだな…」

嫌そうに頭を抱えてみせる壮。

「ごめんね?だから一緒に来てって言ったのに。私一人だと、ついやりすぎちゃうんだもん。壮がいたら抑えられるけど」

巴はそこで初めて申し訳なさそうに謝った。

「同行なんて勘弁してください。そっちの方が後始末が大変そうだ」

「ケチ」

「ケチで結構」

言い捨てて壮は鎌を持ち上げると、ひょいと清掃用の入れ物へと移す。

「姫君、時計を持った白いウサギを追いかけた少女はどうなりましたっけ?」

いきなり童話の話を持ちかけられ、巴はきょとんとしたものの、すぐに肩を竦めて答えた。

「穴に落ちて血まみれになって死んじゃったわ」

「正解です。好奇心が旺盛すぎると死ぬことになります。私はそんな目にあうのはごめんですよ」

面倒そうに言われ、壮らしいね、と巴は零す。

「本当、壮らしい。だから殺せないんだもん、私」

巴は大好きになるとその人を殺す。
それは反射と反動で、手をかけた本人も無意識の行動のように。

「壮も、もっと私に好きにならせてほしいのに」

不満そうに言って壮を見ると、彼は首を振ってみせた。

「それもごめんですね。私はあなたに殺されたくはない」

「殺しちゃったらそれは謝る」

「そういう問題じゃありません」

それからまた椅子に座ると、壮はしばらく無言で紅茶を飲んでいた。
それにならって巴も一度置いたカップを手にする。
立ち上る香りがなんとなく心を落ち着かせる効果がある気がした。

「・・・夜も更けてきましたね」

「最初から更けてるけどね」

十分も時間が経ったか経たないかしたところで、壮がそう言って立ち上がった。

「揚げ足をとるものじゃありませんよ。さあ、そろそろ見つからないうちに部屋に戻って着替えておいてください。汚れた服はあとで洗っておきますから」

追い立てられるようにして巴も立たされる。
まだ紅茶が飲み途中なのに…と抗議すると、また淹れてあげますから、と諭された。

「分かった分かった。それで寝ればいいんでしょ。夜更かしするな、が口癖だもんね、『先生』は」

巴は揶揄するように言い、立ち上がると部屋を出て行こうと歩き出す。

「おやすみなさい~」

ひらひら手を振って挨拶をする。

「姫君」

すると、追い立てたはずの壮が自分を呼び止める。

「何?」

頭だけ振り返ると、壮が少し躊躇った様子なのが分かる。
巴は先を促した。

「…好きな人を殺して、寂しいですか」

静かに問われた言葉。
巴はふ、と力を抜くように微笑んだ。

「なんだ、そんなことか」

そんなことを今更聞くのか、と巴はなんだか可笑しくなった。

「ねぇ、壮」

「はい、なんです」

「首を狩り続けたハートの女王は、どうしてそんなに首を狩り続けたと思う?」

壮が童話をたとえ話にしたのを模して、巴も訊く。
謎かけをする姿は、いたずらっこの悪巧みをする時の顔に似ていた。

「…癇癪持ちだったんじゃないですかね」

「はは、そうかもしれないけど。私はこう思うよ」

それから一呼吸置いて。

「他人にこれ以上絶望したくなかったから、じゃないかな。今以上に裏切られるのが怖かったんだよ」

だって世の中はこんなに醜いもんね、と巴は笑う。
私のような者が平気な顔をして闊歩してられるのだから、と。

「私も同じ。私は素直だから嘘がつけない。大好きだと全部を信頼してしまう。大好きだから全力で好きになることしかできない。だから裏切られて、絶望する前に大好きなままの姿で終わってしまって欲しいの」

「…姫君…」

「こんな風にしか考えられないことが既に私は寂しいよ」

巴は気が付けば堕ちていくような笑みを浮かべていた。
それを見た壮が、小さく溜息を吐く。
壮は何度もこうして巴に呆れたような素振りを見せてくる。

「でも、女王には白ウサギが最後まで付き従いますよね」

そうして、言うのだ。

「それは、女王が白ウサギは殺さずにいたからです。白ウサギは殺す対象にならなかった」

呆れた顔から今度はそれは微笑みに変える。

「だから、私はあなたに好かれたりしない。それで、いいでしょう?」

それは。
言外に一緒にいると言ってくれているのだと分かる。
でもそれを訊いた巴は、やっぱり笑うしかなかった。

「それでも私は、やっぱり壮のことは大好きになりたいな」

呟くように。
けれど壮にはちゃんと聞こえていると知っている。





「――――――――――――絶対ごめんですよ」


壮はやっぱり、そうとしか答えてくれなかった。

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自己紹介:
共感する言葉は「苦しい」「辛い」「切ない」。
好きな言葉は退廃と殺伐と絶叫と断末魔。
最萌は知盛、泰衡、ナーサティヤ(遙か)とe-zuka(GRANRODEO)と杉田智和(声優)
表向きより虚ろ気味な基本根暗の乙女ゲーマー。
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